05/28 (金)更新
コロナ影響?「技能実習3号」急増 在留外国人、特定技能への移行敬遠か
古川幸太郎
3年間の実習期間を終えた外国人技能実習生が最長2年間延長できる在留資格「技能実習3号」の取得者が急増している。制度創設は2017年だが、今年6月末現在の取得者は3万3022人。国内の実習生が新たな在留資格「特定技能」ではなく、3号に移行している実態をうかがわせている。専門家は「人手不足をなお実習生で補っている業界は多い。企業も外国人もコロナ禍で手っ取り早い3号に流れている」と指摘する。
在留資格「技能実習」は1年目を1号、2~3年目を2号としている。3号はこの3年間の実習修了後、技能検定3級相当試験に合格するなどすれば取得できる。法務省の統計によると、3号在留者は導入当初の17年は8人だったが、18年は7398人、19年は2万6356人と一気に増え、新型コロナウイルスの影響で海外との往来が途絶えた20年も伸び続けている。
一方、外国人労働者の受け入れ拡大を目的に19年4月に新設された在留資格「特定技能」は低調だ。人手不足が深刻な14分野が対象で、技能実習からも移行できるが、9月末時点で8769人にとどまっている。福岡県内にある実習生の受け入れ監理団体の関係者は「技能実習の方が慣れていて安心感がある。特定技能はなじみがなく(実習生に移行を勧めるのは)抵抗がある」と明かす。
企業からも「コロナ禍で人の往来が止まった。国内にいる実習生が3号に移行する方が便利だ」との声が上がる。ただ、勤務先(実習先)を選べない技能実習は人権上の問題も指摘される。特定技能には職業選択の自由があり、資格取得者はその分野の範囲内で就職先を選ぶことができる。
在留期間を最大限に延ばすため、3号が利用されている側面も浮かぶ。介護事業関係者は「技能実習3号まで5年滞在して特定技能に移れば、計10年在留できる。雇う側も雇われる外国人にもその方がありがたい」という。
移民問題に詳しい国立社会保障・人口問題研究所の是川夕氏は「恒常的な人手不足から技能実習は増加基調が続き、特定技能の様子見も続くだろう。ただ、グローバルな人材獲得競争は激しく、世界経済の動向次第で今後の人材の流れがどうなるかは予断を許さない」と指摘する。
(古川幸太郎)
引用元:西日本新聞
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