07/30 (金)更新
ストレスチェックが義務化? 外国人も含めて行わなければならないストレスチェックとは
ストレスチェックとは、従業員がストレスに関する質問票に回答・分析し、自分のストレス状態を把握するものです。
業務上のストレスが原因の疾患や過労死を防止するために、2015年から一定以上の規模の事業者で実施が義務化されました。
特に日本の労働環境は仕事のボリュームや納期、職場の人間関係などストレスを抱えがちな傾向があります。
定期的なストレスチェックは、メンタルヘルスへのダメージを未然に防ぐ上で非常に重要です。
そこで今回は労働者を雇用する側が把握しておくべき、ストレスチェックとその結果に対する対処法を説明していきます。
ストレスチェックとは
ストレスチェックとは、企業が従業員に対し、心理的な負担の程度を把握するための検査のことです。
平成27年から厚生労働省の労働安全衛生法にて「ストレスチェック制度」が義務化され、企業は従業員に対して検査を実施し、結果に基づいて医師による面接指導を行うことが必要となりました。
ストレスチェックは、従業員自身がストレスに気づき、メンタル不調のリスクを低減させる「一次予防」として実施しています。
ストレスチェックの目的
現代人の多くは仕事や職業生活において悩みやストレスを感じることが多いといわれており、忙しく過ごすうちにストレスを溜め込んで、就業が難しいほどに疲弊してしまったり、精神障害に陥る事例も多数報告されています。
そしてストレスチェックが義務化された背景には、劣悪な労働環境と、それが原因となった過労死や自殺があります。
現代人の度重なる職場でのストレスによって引き起る事象によって「労働安全衛生法」が改正され、事業者が努めるべき措置として「労働者のメンタルヘルスケアに取り組むこと」が加えられました。
その後、1999年に「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」が公示され、精神障害等にかかわる労災認定の判断要件が明確化されました。
そして長い年月をかけて過労死や自殺を予防するための取り組みが進められ、2015年に事業者による従業員のストレスチェックが義務付けられたのです。
ストレスチェックの対象者とは
ストレスチェックが義務化されているのは、「労働者が50人以上いる事業所」です。
この条件に当てはまる事業所は全て、年1回、対象となる全ての従業員のストレスチェックを実施しなければなりません。
実施の頻度は1年以内ごとに1回、定期的に行うことが定められています。
50人以上の理由としては、50人以上の会社では人間関係や業務上でストレスが溜まりやすいという事から「労働者が50人以上の事務所」に定義されていますが、ストレス社会の現代では「労働者が50以下の事務所」でも行うべきでしょう。
労働者50人以下の事業所ではストレスチェックは義務ではありませんが、努力する義務はあり、ストレスチェックをした方が望ましいとされています。
さらには派遣社員に対しては、派遣元の事業上に実施する義務が定められました。
ストレスチェックのの対象となる労働者
ストレスチェックの対象者となる労働者以下の通りとなります。
・期間の定めのない労働契約により使用される者である人
・週労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上である人
つまり、働く予定の期間が1年以上かつ、所定労働時間数の4分の3以上働いていればストレスチェックの対象者です。
契約社員・パート・アルバイトも、上記の条件を満たしている場合は対象者となります。
もちろん国籍も関係なく、外国人であっても対象者となります。
逆に、正社員であっても休職・時短労働などで上記の条件を満たさない場合にはストレスチェック義務化の対象外です。
ちなみに、ストレスチェックの対象となるのは「労働者」のみなので、「使用者」である役員は義務化されていません。
外国人労働者も対象
上記の条件に当てはまる労働者の場合、外国人であってもストレスチェックの対象となります。
外国人労働者は母国の家族から離れ、文化の異なる異国の地で働くためストレスを溜め込みやすい状況にあるといえます。
ストレスチェックの問診票は多言語で入手することも可能なので、通常のコミュニケーションでは見抜けない労働者の心身状況を把握するために、制度に従って定期的に実施をしましょう。
ストレスチェックの注意点
最後に、ストレスチェック実施時の注意点をお伝えします。
個人情報・プライバシー保護
ストレスチェックの内容は、個人のプライバシーに触れる非常にデリケートなものです。
そのため、当事者と実施者以外の第三者に、質問への回答やチェック結果が知られることはあってはなりません。
法律により、ストレスチェックに関わる個人情報を扱う人には守秘義務が課されます。もし違反すれば刑罰の対象となります。
不利益取扱いの防止
ストレスチェックに関して、事業者が以下のことを理由に、労働者に不利な取り扱いを行うのは禁止されています。
これを、「不利益取扱いの防止」といいます。
・医師による面接指導を受けたい旨の申出を行ったこと
・ストレスチェックを受けないこと
・ストレスチェック結果の事業者への提供に同意しないこと
・医師による面接指導の申出を行わないこと
また、ストレスチェックや面接指導の結果を理由として、解雇・雇い止め・退職勧奨・不当な動機、目的による配置転換・職位の変更を行うこともしてはなりません。
ストレスチェックの実施方法とその流れ
ストレスチェックはどのような方法で実施してもよいわけではありません。どのように実施すればよいのでしょうか。
1.調査票の配布
調査票の種類は、実施者である医師などの意見と職場の衛生委員会での審議をもとに選べることになっています。
しかしストレスチェック制度では、57項目の「職業性ストレス簡易調査票」を使用することが推奨されています。
使用する調査票は、紙で配布してもよいですが、個人情報流出防止の観点からオンラインで行うのがよいでしょう。
2.労働者による回答
調査票を配布したら、回答期間を決めて労働者に回答してもらいます。
ちなみに厚労省では、「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を無料配布しています。
こうしたWebツールを使うことで事務作業を簡素化することができます。
3.調査票の回収
紙で調査票を配布した場合は、調査票の回収が必要になります。
紛失を防止するために、なるべく1か所に集めるようにしましょう。
4.実施者による評価結果の分析
ストレスチェックの結果が出たら、医師や保健師などの実施者が分析を行い、衛生委員会などで提案や助言を行います。
また個々の結果についても実施者が評価を行って高ストレス者を特定します。
5.高ストレス者への面接指導
万が一、高ストレス者が発見された場合は事業者が該当者に対して面接指導の勧奨を行うことができます。
反対に本人が面接指導を希望した場合は、事業者は医師による面接指導を行う義務があります。
また面接指導は、申出から1か月以内に行います。
また作成した面接指導記録は、5年間保存する必要があります。
6.面談希望者への対応
高ストレス者だけではなく、事業者は面談希望者に対しても医師との面談指導を実施しなければなりません。
7.職場環境改善の検討
高ストレス者に対して面接指導を行った医師は、職場環境の改善について提言することが定められています。
事業者は医師から受け取った提言をもとに職場環境改善を検討します。
ストレスの高い職場環境を放置すると組織の生産性も低下するため、早めに対策を検討しましょう。
まとめ
現代社会では職員のストレスチェックは企業にとって非常に重要な事です。
雇用した社員を守る為にも、企業はストレスチェックのみならずケアも行いましょう。
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