07/16 (金)更新
外国人の退職理由とは?人事が知っておきたい手続きと対策もしっかり解説
人が会社を辞める理由は、『やむを得ない事情を抱えている』『自分のキャリアのために退職・転職する』『今の会社の人間関係や待遇に不満がある』等、人によって退職理由は様々です。
他国から働きに来ている、外国人の人材に関しては日本人と同じような理由だけでなく、言葉や文化の違いから、外国人ならではの事情や理由よって退職する事が多々あります。
今回は外国人の退職理由や、企業の採用担当者様が退職に対して行わなければならない手続きに関して説明していきます。
日本の主な退職理由統計
日本政府が公開する統計データによると、以下のようになっています。
「定年・契約期間の満了」を除くと、男性では「収入への不満」が離職理由1位、女性では「労働条件への不満」が離職理由1位となっています。
ただこれは平均的なデータになり、雇用形態や産業、事業規模によっては、退職理由が大きく異なることがわかっています。
日本人と外国人の退職理由
外国人は『わざわざ日本まで来て就職したのに給与が低い』『ビザ取得の難しさに対して、仕事の割が合わない』など、来日した労力に見合わない労働環境に不満を感じることが多いようですが、大枠でいうと、外国人の退職理由も日本人とそれほど変化はありません。
給与が低い
外国人の労働者達はわざわざ日本でお金を稼ぐ為に、来日しているので稼ぐ事が出来なければ転職する事は当然だと言えます。
特に外国人の離職率が高い職場では、外国人と日本人で給与差が大きい事が原因だと言われています。
外国人の労働者達は日本人労働者と扱いに差がないようにしなければなりませんが、それが守れていない職場では不公平だという不満により退職者が増加してしまいます。
職場の人間関係が上手くいかない
日本人・外国人問わず「職場の人間関係」は退職理由の上位に入ります。
これにくわえて、日本企業における上司と部下の関係性や、先輩、後輩といった序列は、日本独特であると感じる外国人は多いようです。
体育会系の色が強い、人間関係の序列やグループ形成に大きく影響している企業などは、中途採用社員や外国人は仲間に入りづらいと感じてしまう可能性があるでしょう。
労働時間・休日等の労働条件が悪い
外国人はワークライフバランスを重視する人が多く、日本企業の『休日の日数』や『残業時間』には満足できないケースが多くあります。
世界的にも、日本企業は『残業が当たり前とされている』『有休を消化しづらい』など休む事が出来にくい風潮にありますので、外国人から見れば悪い労働条件と感じられる事もあるでしょう。
また日本企業には就業時間外の懇親会や、休日でも義務として参加しなくてはいけないイベントもあるので、仕事とプライベートの線引きがはっきりした雇用文化を持つ国出身の外国人にとっては、受け入れ難い労働環境になります。
能力やスキルを活かしずらい
日本で就労する外国人は試験や実績によって「日本で従事しようとする業務に必要な技術又は知識」が認められないと就労が認められません。
このため専門性を高めて、技術や知識を伸ばしていきたいと思っている外国人も多いと思います。
しかし日本人社員の補助的役割ばかりを期待されることも多々あるため、求めているスキルを発揮出来ずに辞める人材も多くいます。
外国人の独自の退職理由とは
前述までには国籍、年代、性別を問わない、一般的な退職理由を説明してきました。
ただ言葉や文化の違う外国人ならではの悩みによって退職が引き起こる要因もあります。
「外国人」として扱われてしまう不満
日本企業では、日本人正社員同士でも、入社時期や学歴によって待遇の差がついてしまう事があります。
外国人の中には日本人とまったく同等の待遇を求めていたのに、『外国人であるために待遇差が埋められない』『外国人として対応に線引きされてしまう』等の、職場環境やキャリアアップの待遇差に不満があります。
それによる失望から退職をしてる外国人が非常に多くいます。
日本の文化に馴染めない
日本に働きに来る外国人は少なからず日本に興味を持って来日している人が多いはずですが、やはり日本の文化・風習に馴染めない人もいます。
言語や文化、生まれ育った環境がも全く違うので馴染めないの層が居るのも当たり前です。
日本であれば当たり前のルールやマナーでも外国人にとってはそうではないのです。
マナーや食事、宗教上の問題を理解して貰えずに、退職する外国人は非常に多いと言えます。
ハイレベルな日本語でビジネスをするよう求められる
日本では、グローバル企業でも日本語でのコミュニケーションが求められがちです。
仕事の評価に日本語コミュニケーション能力が含まれる場合、上司からの評価を得る事も難しいのでやる気もなくなります。
話す、読む、書く、すべてにおいて日本語が求められる場合、日本語ネイティブでない外国人には負担が大きいといえます。
日本語環境に付いて行く事が出来ず、悩んでいる外国人もいます。
日本の将来性が心配
外国で長期滞在して就労するとなれば、自分の将来を託すに値する魅力的な国や社会で働きたいと考えるでしょう。
優秀な外国人には日本以外の国で働くという選択肢がありますので、日本という国や社会にあわない、または自分の将来が託せないと感じれば帰国してしまいます。
外国人の退職に必要な手続きとは
「日本人」「外国人」問わずに社員の退職についてまず知っておきたいのは<退職は労働者の自由である>ということです。
民法第627条では、雇用期間の定めのない場合は、いつでも解約の申入れをすることができ、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了するとされています。
そのため、雇用中の外国人社員が2週間前までに退職を申し出たならば、雇用主はそれを受け入れなければなりません。
ただ外国人が退職する際、基本的には日本人と同じ手続きをしますが、外国人にのみ必要な手続きがあるので、企業の採用採用担当者様はしっかり把握しておく必要があります。
企業が行う手続き
外国人社員のみに必要な退職手続きは、外国人雇用状況の届出をハローワークに対し行う事です。
この届出を怠ると30万円以下の罰金の対象になってしまうので、忘れずに行いましょう。
ただし雇用保険に加入していた場合は、雇用保険被保険者資格喪失届をすることにより届出に代えることができます。
仮に雇用保険に加入していなかった場合等は「中長期在留者の受入れに関する届出」を入国管理局に対し14日以内に行わなければなりません。
以上が外国人社員退職時に会社側が行わなければならない項目となります。
外国人が行う手続き
・退職者は「契約期間に関する届出」を入国管理局に対し14日以内に行わなければなりません。
また外国人社員が雇用保険に加入していた期間が原則12月以上あれば、退職後に失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取ることが可能です。
ハローワークで基本手当を受け取るための手続きは日本人と同様ですが、外国労働者の中にはこの手続きを知らない人もいるので、退職時には外国人が理解出来るように説明するようにしたほうがいいでしょう。
退職に必要な書類
外国人社員が退職する際は、以下の書類が必要です。
・源泉徴収票の交付
・雇用保険離職票の交付
・健康保険の保険証回収
・その他備品や貸与品の回収
・求められた場合は退職証明書
原則、日本人の退職者と同様の書類や手続きをします。
外国人社員を退職させない為には
上記まで退職理由や、採用担当者が知っておくべき退職の手続きについて説明してきましたが、外国人の退職者を出さない事が一番です。
せっかく採用した貴重な外国人の人材を手放すのは非常にもったいないので、外国人の退職を防止する為に企業が取り組むべき対策について説明していきます。
外国人の指向を理解しよう
外国人の人材の仕事やキャリアへの向き合い方と会社の制度を擦り合わせていきましょう。
自分と立場を置き換えて、外国人の事をしっかりと人事制度を取り入れることです。
外国人も日本人と同じように毎日頑張って働いているので、目に見えた待遇差があれば不満が出てくるのは当然です。
またほとんどの外国人は、日本では当たり前になっている「年功序列」という制度に馴染みがありません。
外国では能力があれば勤続年数が少なくてもキャリアアップしたり昇給したりする事が当たり前の文化なのです。
特に優秀な人材ほどこの思考が強い傾向にありますので、せっかく採用した優秀な人材を手放してしまわない為にも、この文化の違いを理解しておきましょう。
この外国人の文化に合わせた、勤務年数や国籍ではなく能力やスキルで地位や給与を設定すれば、外国人からの不満も出なくなると思います。
しかし、急に外国人に合わせた人事制度を作成するのは難しいのではないでしょうか?
いきなり大幅に変えた人事制度を設定するのではなく、外国人達の要望に歩み寄りながら、日本のキャリアアップの文化を理解してもらえるように努めましょう。
万全の受け入れ体制の構築
言葉も文化も違う別の国で働くという行為は、時に大きなストレスとなり外国人人材を苦しめます。
それぞれの外国人の価値観を理解した上で、入社前に日本の価値観をしっかり説明することが重要です。
しっかりした理由を説明せずに『日本のやり方に従いなさい。』このような指示をしてしまうと、外国人にとって自国の文化、存在自体を否定されたと受け取られてしまうこともあります。
外国人とコミュニケーション取って、しっかり文化や制度の違いを説明する事で誤解を生む事なく円滑に進める事が出来ます。
また採用前に外国人たちの日本語レベルを事前に把握しておく事で、入社後のコミュニケーションのトラブルを避ける事が出来ます。
日本語が得意でない人材に関しては、社内で日本語教育の場を設けたり、専門学校へ通う事を社内で促しましょう。
業務に関する説明
外国人人材はプロフェッショナル意識が高く、採用された役割や専門的な業務をこなそうとする傾向が日本人に比べて高くなっています。
そのため、日本人の様に急に別の仕事を振られても対応する事が出来ない場合があります。
途中で別の仕事を振ってもそれを断って本来の業務を遂行しようとし、その姿が「柔軟性がない人」と判断され社内での人間関係に支障をきたすケースもあります。
入社前の採用時に主にメインで行ってもらう仕事の内容、行うことについてよく説明しましょう。
また日本企業での仕事のやり方を共有し、メイン業務以外の雑務についても協力するよう理解を促しておくことでお互いの認識違いを防げます。
コミュニケーション環境を整える
外国人と働くにあたって一番の障害は言葉のコミュニケーションです。
普段の一般的な会話はできたとしても、仕事の最中に伝えたいことが正確に伝わるとは限りません。
外国人との会話時は直接的で分かりやすい言葉を使用し、比喩的な言葉を使わないなどを徹底した方がいいかもしれません。
日本人であれば理解出来ても、まだ日が浅い外国人には理解出来ない場合が多くあります。
また、もう1つ気をつけたいのが、言葉で表さずに空気を読まなくてはいけないような遠まわしな言い方を避けることです。
「空気を読む」「暗黙の了解」から推測するという文化は日本特有の文化です。
遠まわしな表現やあいまいな言葉では、外国人に誤解を与えてしまったり、理解が出来ない可能性があるので注意してください。
まとめ
ここまで『外国人労働者の退職理由』『退職の手続き』『退職させないためには』を説明してきました。
どこの企業も外国人の人材には、日本人には無い可能性や技術スキルを求めて採用していると思います。
企業のこれからの発展の為に採用している外国人が辞めてしまっては元も子もありません。
日本人の採用と異なり、同じレベルのスキルを保有する外国人の採用は頻繁に出来る事ではないです。
外国人の離職率を下げるために、日々の生活やコミュニケーションをふくめた細やかなサポート体制の整備や、日本人社員との大きな待遇差を設けないことが重要です。
日本の今後の未来の発展にも、お互いが協力し合い、円満な職場環境を作りましょう。
SELECTでは外国人の採用から、雇用やトラブルのお悩み相談まで請けていますので、お気軽にお問い合わせください。
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